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人材紹介の複数併用|採用企業が知る利点と負担
人材紹介会社を1社に絞るべきか、複数社に依頼すべきか、悩む採用担当者は少なくありません。結論として、複数併用には母集団の拡大や料率の相対化という利点がある一方、同一候補者の重複推薦や連絡工数の増加という負担も伴います。この記事では、厚生労働省の公開データと契約書の確認記録を基に、複数併用の利点と負担、何社に依頼すべきかの判断軸、併用時に使う管理表のひな形を整理します。
人材紹介会社を複数併用するとは何を指すのか
同じ採用ポジションについて、2社以上の紹介会社に同時に候補者紹介を依頼することです。契約は各社と個別に締結するため、複数併用そのものを禁止する法令はありません。転職Docが厚生労働省「人材サービス総合サイト」を集計したところ、12職種のいずれかを扱う紹介事業主は1,011社、事業所数は3,266か所でした(2026年9月19日取得、編集部集計)。1つの職種だけでも数十社の選択肢があるため、実務上は複数併用が前提になっている採用企業が少なくありません。
複数併用にはどんな利点があるのか
母集団の拡大、比較の物差しの確保、料率の相対化の3点です。
母集団はどのくらい広がるのか
1社だけに依頼すると、その会社が抱える登録者やネットワークの範囲でしか候補者に出会えません。複数社に依頼すると、各社が独自に持つ登録者やスカウト網が合算され、母集団が広がります。特に希少職種や急募のポジションでは、対応可能な事業主の数自体が限られるため、複数併用で選択肢を確保する効果が大きくなります。
料率はどう相対化できるのか
この集計では、手数料実績率を1職種以上公開している事業主は738社(1,011社の73%、2026年9月19日取得)でした。同じ職種でも料率には幅があります。例えば営業職を扱う257事業主の手数料実績率は中央値32.6%、25パーセンタイル27.0%から75パーセンタイル35.0%に分布します(同集計)。全体の相場は「人材紹介の手数料相場」で解説しています。1社の提示額だけでは、それが相場のどの位置にあるか分かりません。複数社から提示を受けることで、料率を相対化して交渉の材料にできます。交渉の進め方は「人材紹介の手数料の交渉方法」にまとめています。
比較の物差しは何になるのか
料率だけでなく、対応の速さや候補者の質を比較する物差しにもなります。1社だと基準がないため評価が印象論になりますが、複数社を並べると初回提案までの日数や書類の精度に差が見えてきます。比較の基準を事前に決めておくと、担当者の印象に流されずに評価できます。基準の作り方は「紹介会社の選び方7つの基準」で整理しています。
複数併用にはどんな負担があるのか
同一候補者の重複推薦への対応、連絡・進捗管理の工数、条件のばらつきの3点です。
同一候補者が複数社から推薦されたときはどう対応するのか
複数の紹介会社に同時に依頼すると、同じ候補者が別の会社からも推薦されることがあります。転職Docが確認した契約書の解説記事1本(契約ウォッチ)と、実際に読み比べた契約書2社分(東京都のA社、愛知県のB社。「人材紹介の契約書の注意点」で既報)の合計3件のうち、重複推薦時の帰属ルールを明記した条項があったのは0件でした(2026年9月20日確認)。契約書に明文化されていない領域のため、業界の解説記事は「応募書類が先に届いた紹介会社を優先する」という紳士協定に近い運用が浸透していると説明しています(JobSuiteメディア、2026年9月20日取得)。採用企業側では、推薦を受けた日時と候補者名を記録し、重複が判明した時点で先に推薦を受けた会社を通じて選考を進める運用をあらかじめ決めておくと、後のトラブルを避けやすくなります。
連絡・進捗管理の工数はどう増えるのか
依頼する会社が増えるほど、進捗確認や日程調整の連絡先も増えます。同じ内容を複数の担当者に説明する手間や、選考状況の食い違いを防ぐための共有作業も発生します。担当者・連絡手段・直近の進捗を1枚の管理表にまとめておくと、確認の往復を減らせます。
条件のばらつきにはどう対応するのか
料率だけでなく、理論年収の定義や返戻金の区分は会社ごとに異なります。「人材紹介の契約書の注意点」で確認した2社の契約書でも、理論年収に入社時賞与を含めるかどうかに違いがありました。契約前に各社の定義を書面で確認し、後述の管理表に記録しておくと、請求額の食い違いに気づきやすくなります。
何社に依頼すればいいのか
何社が最適かを示す公開データはありません。この集計でも、事業主あたりの併用実績は追跡されていないため、平均社数のような数字は出せません。代わりに、次の3つの判断軸で社数を決めます。
- 職種の専門性・希少性が高いほど、対応できる会社の数自体が絞られるため、少数精鋭になりやすい
- 急募度が高いほど、母集団を広げる必要があり、併用数を増やす動機が強まる
- 社内で進捗管理に使える人員・時間が少ないほど、管理できる社数の上限が低くなる
依頼を始める実務的な流れは「人材紹介の依頼から成約までの流れ」で解説しています。
併用時の管理表には何を記録すればいいのか
会社名・担当・料率・理論年収の定義・返戻金・推薦日・候補者IDの7項目です。
| 会社名 | 担当 | 料率 | 理論年収の定義 | 返戻金 | 推薦日 | 候補者ID | |---|---|---|---|---|---|---| | A社(記入例) | (自社担当者名) | 35% | 月次給与12か月分+通年賞与+入社時賞与を含む | 1か月未満80%・1〜2か月50%・2〜3か月20% | (記入) | (記入) | | B社(記入例) | (自社担当者名) | 35% | 月次給与12か月分+通年賞与(通勤手当等の割増賃金は除外) | 1か月以内80%・1〜3か月50% | (記入) | (記入) | | (自社で追加) | | | | | | |
A社・B社の列は、「人材紹介の契約書の注意点」で確認した実際の契約内容です。料率・理論年収の定義・返戻金は契約時点の内容を転記し、契約が更新されたら見直します。候補者IDは社内の応募管理システムのIDをそのまま使うと、重複判定がしやすくなります。
よくある質問
Q. 人材紹介会社を何社まで併用しても法令上の制限はあるか A. 併用社数を制限する法令はありません。各社との契約は個別に成立し、職業安定法も社数の上限を定めていません。ただし契約書ごとに直接雇用禁止条項の範囲が異なるため、契約数が増えるほど確認すべき条項も増えます。
Q. 同じ候補者が2社から推薦されたら、どちらに紹介料を払うのか A. 契約書に明文の規定がない場合、業界では先に推薦を受けた会社を優先する運用が一般的です。ただしこれは契約書に基づく義務ではないため、契約前に自社の対応方針を決め、可能であれば紹介会社にも伝えておくとトラブルを避けやすくなります。
Q. 併用する会社の数を途中で減らしてもよいか A. 契約の解約条件に従えば減らせます。多くの契約は自動更新の条項を持つため、更新月の前月までに解約を申し入れる必要があります。実際に確認した2社の契約書も、更新1か月前が解約通知の期限でした。
Q. 併用によって候補者に不信感を与えることはあるか A. 候補者自身が複数の紹介会社に登録していることは珍しくありません。ただし同じ候補者への対応で選考スピードや連絡内容に差が出ると、比較されて不信感につながることがあります。管理表で対応状況を揃えておくと防ぎやすくなります。
まとめ
人材紹介会社の複数併用は、母集団の拡大と料率の相対化という利点と、重複推薦・連絡工数・条件のばらつきという負担を伴います。何社が最適かを示す数字は公開データにはなく、職種の専門性や急募度、社内の管理体制から社数を判断します。転職Docは、会社名・料率・理論年収の定義・返戻金・推薦日・候補者IDを記録する管理表の運用を推奨します。